サンプルのイメージを面で捉えることができるライトシート顕微鏡は、組織透明化研究において強力な解析ツールとして作用します。
共焦点や2光子顕微鏡と言えど、全組織をスキャニングして撮像するにはかなりの時間を要します。一方、ライトシート顕微鏡はシート状の励起光を利用することでサンプルの断面からの蛍光を検出することができるため、短時間でのホールイメージングが可能になります。マウスの全脳をおよそ1時間程度で撮像できるようになりました。また、光毒性が少ないのもライトシート顕微鏡の特長です。

弊社ではSmartSPIMと呼ばれるライトシート顕微鏡を取り扱っております。

落射式の蛍光顕微鏡とライトシート顕微鏡の原理


SmartSPIMの特長は、比較的大きなサンプル (マウスの全脳以上) の撮像に適しているという点です。

ライトシート顕微鏡のシート励起は、その厚みが直接Z軸の分解能に相当します。そのためシート励起の中心が最も高分解能とされています。SmartSPIMではこのシート励起の厚みが中心から両端にかけて変わらないように光を出力しているため、サンプルのどこを見ても安定した分解能を維持できるように設計されています。

右の図は、SmartSPIMのシート励起の特長を表したものです。このSmartSPIMで撮像したデータの一部をベージの下部に掲載したのでご覧ください。


SmartSPIMの特長


CD90にYFPタグしたマウス透明化脳


anti-GFPで染色したマウス透明化脳


SYTO16で染色したマウス透明化脳


作成日 2021/01/27

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透明化組織の新しい染色アプローチ
組織の染色には数10 µmの厚さにスライスした切片を用いることが一般的です。これは染色に使用する抗体が組織深部へアクセスすることが困難なため、薄くスライスした切片標本が必要になります。 そのため、顕微鏡で撮像する際は染色した切片画像をつなぎ合わせる作業が必要です。 透明化標本の場合、特にCLARITYなどの脱脂を伴う方法で作成したサンプルは、スライスをせず全組織のまま抗体を深部までアクセスすることが可能になりますが、通常の浸漬法では抗体を深部まで染めるのに数週間ほどかかります。 この時間を短縮するために、電気泳動法を用いて抗体を物理的な拡散で組織深部へ移動させる方法が開発され(1)、同年にCell誌で全組織を抗体染色する新しいアプローチとして、「Switch」法が発表されました。 このSwitch法は、抗体をラベリングする際にOFFとONの2つの溶液を使用することがポイントです。 OFF溶液:低pHかつSDSを含む ON溶液:中pHでSDSを含まない OFF溶液は低pHかつSDSを含む溶液に調製されており、抗体が組織へアクセスしても標的抗原には結合しません。 このOFFステップで組織内へ均一に抗体を分布させた後、ON溶液に切り替えることで組織内へ浸潤した抗体が抗原と結合します。 この2つのステップを介することで、抗体の染色ムラを抑え、均一なラベリングを行なうことができます。 このSwitch法と電気泳動の高速免染を掛け合わせたのが、SmartLabel高速免疫染色システムになります。