c-Fos抗体を導入したマウス全脳の海馬および大脳皮質

c-Fosの発現は、直近の神経細胞の活動の指標であり、c-Fos陽性の細胞の検出は多くの神経科学者にとって優先度の高い課題となっています。この動画は、抗c-Fos抗体で染色したマウス全脳の海馬と大脳皮質を横断面で捉えたものです。このデータは、LifeCanvas社のライトシート顕微鏡SmartSPIMを用いて、倍率3.6X, 4 µmのZスタックで取得しました。c-Fosの染色は、高速免疫染色システムであるSmartLabelで行なっております。

このような膨大なデータの定量化において、LifeCanvas社は大規模な3Dデータセット用に設計された機械学習解析システムである「SmartAnalytics」を開発しました。

〇SmartAnalyticsでできること

  • アトラス画像の整理
  • 細胞検出
  • 蛍光強度の定量化


左:抗c-Fos抗体で染色したマウス脳半球の領域別の細胞密度のヒートマップ、右:同サンプルのヒストグラム (SmartAnalyticsで作成)


作成日 2021/06/07

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透明化組織の新しい染色アプローチ
組織の染色には数10 µmの厚さにスライスした切片を用いることが一般的です。これは染色に使用する抗体が組織深部へアクセスすることが困難なため、薄くスライスした切片標本が必要になります。 そのため、顕微鏡で撮像する際は染色した切片画像をつなぎ合わせる作業が必要です。 透明化標本の場合、特にCLARITYなどの脱脂を伴う方法で作成したサンプルは、スライスをせず全組織のまま抗体を深部までアクセスすることが可能になりますが、通常の浸漬法では抗体を深部まで染めるのに数週間ほどかかります。 この時間を短縮するために、電気泳動法を用いて抗体を物理的な拡散で組織深部へ移動させる方法が開発され(1)、同年にCell誌で全組織を抗体染色する新しいアプローチとして、「Switch」法が発表されました。 このSwitch法は、抗体をラベリングする際にOFFとONの2つの溶液を使用することがポイントです。 OFF溶液:低pHかつSDSを含む ON溶液:中pHでSDSを含まない OFF溶液は低pHかつSDSを含む溶液に調製されており、抗体が組織へアクセスしても標的抗原には結合しません。 このOFFステップで組織内へ均一に抗体を分布させた後、ON溶液に切り替えることで組織内へ浸潤した抗体が抗原と結合します。 この2つのステップを介することで、抗体の染色ムラを抑え、均一なラベリングを行なうことができます。 このSwitch法と電気泳動の高速免染を掛け合わせたのが、SmartLabel高速免疫染色システムになります。