一般にストレスはさまざまな精神疾患様症状の原因となります。実験動物においてもストレス(離乳後の孤立飼育、新生仔期における母親からの隔離、捕食動物
の臭気など)により行動に変化が生じます。このような動物は精神疾患モデル動物として、精神疾患の病態や有効な治療薬の開発について研究されています。
この装置では精神疾患症状を発症した実験動物の病的な攻撃性を数値化できるため、治療薬( 抗うつ薬など)の有効性を検証する研究を効率的に実施することがで
きます。
攻撃行動計測装置Aggression Response Meter(ARM)は、鹿児島大学口岩聡博士らによって開発されており、PowerLab 接続式の本ARM Ⅱシステムにおいても従来の装置と同様の計測数値が得られることが鹿児島大学大学院歯科応用薬理学教室の五十嵐健人博士らによって検証されています(Kuchiiwa and Kuchiiwa, J.Neurosci. Methods, 2014, 2016; Igarashi et al., Data Br.,2023) 。
この装置は、
など、ストレス影響に関する様々な研究テーマの役に立ちます。また、この装置では、メスの攻撃行動をオスと同様に計測・比較できることもわかっています。
マウスは円筒形のホルダーに入れられます。計測が始まると底面のスリットから2 本の金属棒が10 秒おきに上昇し、マウスを刺激します<イライラ誘発セッション>。
5 分間(30 回)マウスの後肢部を刺激した後、こんどはマウスの眼前に金属棒を提示し、棒に対する噛みつきなど攻撃行動の強さを計測します<計測セッション>。
眼前への金属棒の提示を5 分間(30 回)繰り返すと計測セッションを終了します。
マウスを刺激する金属棒は先端が丸く、速度も速くはないので、マウスが痛みを感じることはありません。
従来の装置において離乳後から単独で飼育したマウスの攻撃的噛みつき行動についてよく研究されています(Kuchiiwa and Kuchiiwa, J. Neurosci. Methods, 2014,2016)。マウスは集団生活する動物なので、長期間単独で飼育するとストレスがたまり、ストレス障害(攻撃性)が現れ、棒に激しく噛みつきます(左)。集団飼
育している健康なマウスは刺激棒の動きに対して無関心です(右)。ストレス障害動物に見られるこのような攻撃行動は、痛みを与えない些細な刺激に対して怒りを発現するイライラの症状と考えられます。症状の悪化に伴い対物攻撃行動が増強し、逆に治癒が進むと対物攻撃行動は弱くなります。実験開始時にスクリーニングにより同程度の攻撃性を示す動物を集めるとより少ない個体数(10 匹程度)で実験可能です。
ARMⅡ装置本体の制御、データ記録、解析は、ADInstruments製PowerLabを用いて行います。システムでのご購入の場合は、PowerLab26Tとセットの購入となります。
デジタルI/O機能付きPowerLab(PowerLab35/30シリーズ、26T)を既にお持ちの方は、LabChart v8をお持ちの方は、ARMⅡ装置本体( ARM II for PowerLab)のみをご購入いただければご利用可能ですが、LabChart v8が必要となります。
引用・参考文献
[1] S. Kuchiiwa and T. Kuchiiwa, “A novel semi-automated apparatus for measurement of aggressive biting behavior in mice,” J. Neurosci. Methods, vol. 228, pp. 27–34, 2014.
[2] T. Kuchiiwa and S. Kuchiiwa, “Evaluation of aggressiveness of female mice using a semi-automated apparatus for measurement of aggressive biting behavior toward an inanimate object,” J. Neurosci. Methods, vol. 257, pp. 179–184, 2016.
[3] K. Igarashi, S. Kuchiiwa, T. Kuchiiwa, K. Tomita, and T. Sato, “Comparative data on emotional (psychotic) aggressive biting behavior in mice of ddY strain measured by using two devices; Aggressive response meter and powerlab-compatible type aggressive response meter,” Data Br., vol. 48, 2023.
[4] 鹿児島大学 口岩聡先生のウェブサイト http://www.kuchiiwa.jp/other.html
特許
PAT.NO 4858996
ARM装置本体の外寸 | W 300 mm×D 250 mm×H 281 mm |
ARM装置本体の重量 | 3 kg |
ホルダーの内寸 | S サイズ: 直径 35 mm × 94 mm Mサイズ:直径 40 mm × 94 mm L サイズ:直径 44 mm × 94 mm |
型式 | 品名 |
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ARM II for PowerLab SYS | PowerLab接続式ARM II 攻撃行動計測システム (PowerLab 26T付き) |
ARM II for PowerLab | PowerLab接続式ARM II 攻撃的行動計測システム |
ARM-H-S | ARM用ホルダーS |
ARM-H-M | ARM用ホルダーM |
ARM-H-L | ARM用ホルダーL |