CLARITY透明化手法の心配なところ




1、電気泳動に伴うSDSバッファーのpH変化

SDS電気泳動では経時変化によって、SDSバッファーのpHが低下していきます(Fig. 1)。これは電極間の電気化学反応によって、pHが酸性側に傾くためです。そのため、組織内部のタンパク質の変性に影響する可能性が示唆されています。

 


2、電気泳動によるバッファーの温度上昇

SDS電気泳動によって問題になるのはpHだけでなく、急激な温度上昇も問題となります(Fig. 2)。電気化学反応によって生じた熱によってバッファーの温度が上昇し、組織へのダメージが懸念されます。また、前染色をした組織の場合、温度上昇によって蛍光が褪色してしまうため、適切に温度管理をする必要があります。

これら上記の問題点を克服したCLARITYシステムがSmartClear II高速組織透明化システムになります。


Fig. 1 SDSのpH変化の影響


Fig. 2 電気泳動に伴う温度上昇


作成日 2017/06/27

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透明化組織の新しい染色アプローチ
組織の染色には数10 µmの厚さにスライスした切片を用いることが一般的です。これは染色に使用する抗体が組織深部へアクセスすることが困難なため、薄くスライスした切片標本が必要になります。 そのため、顕微鏡で撮像する際は染色した切片画像をつなぎ合わせる作業が必要です。 透明化標本の場合、特にCLARITYなどの脱脂を伴う方法で作成したサンプルは、スライスをせず全組織のまま抗体を深部までアクセスすることが可能になりますが、通常の浸漬法では抗体を深部まで染めるのに数週間ほどかかります。 この時間を短縮するために、電気泳動法を用いて抗体を物理的な拡散で組織深部へ移動させる方法が開発され(1)、同年にCell誌で全組織を抗体染色する新しいアプローチとして、「Switch」法が発表されました。 このSwitch法は、抗体をラベリングする際にOFFとONの2つの溶液を使用することがポイントです。 OFF溶液:低pHかつSDSを含む ON溶液:中pHでSDSを含まない OFF溶液は低pHかつSDSを含む溶液に調製されており、抗体が組織へアクセスしても標的抗原には結合しません。 このOFFステップで組織内へ均一に抗体を分布させた後、ON溶液に切り替えることで組織内へ浸潤した抗体が抗原と結合します。 この2つのステップを介することで、抗体の染色ムラを抑え、均一なラベリングを行なうことができます。 このSwitch法と電気泳動の高速免染を掛け合わせたのが、SmartLabel高速免疫染色システムになります。