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シナプス可塑性研究の一例としてLTPが挙げられます。シータバースト刺激などを与えると刺激に対するシナプスの反応が長期的に高まるという現象です。LTPは学習と記憶のメカニズムの解明に大きく貢献するであろうと期待され、数多くの研究報告がなされています。右上のデータは急性海馬スライスのCA1領域へシータバースト刺激を与えた後の、テストパルスに対する応答を記録したデータです。右下のデータは応答の Peak to Peak を時間に沿ってプロットしたものです。CA1・CA3・DGを同時に記録可能ですので、LTP研究に飛躍的な進歩をもたらします。
iPS細胞やES細胞を分化させた心筋・神経細胞の機能評価をMEA60システムで簡単に行えます。電気生理学的な特性の評価や化合物に対する毒性評価を行え、特に後者は動物実験法代替の観点から理想的な評価系と言えます。心電図のQT間隔の延長はTorsade de pointesなどの心室性頻脈の指標とされ、これは心室再分極の遅延に起因します。安全性試験の必須項目ですが、クラシカルな電気生理アッセイでは技術と時間を要します。MEA60の記録手法は従来のAPD試験と比較しスループットが飛躍的に向上します。左はES細胞由来心筋、右はE-4031のドーズ試験です。
右の例では、ラットの大脳皮質細胞を35日間マルチ電極アレーディッシュ上で培養し、自発スパイク活動を記録しています。細胞間相互作用の研究や、刺激に対する応答の解析(伝播経路、伝播速度等)を行うのに最適な実験系です。
マルチ電極アレーディッシュ上では数週間から数ヶ月間の神経細胞培養が容易に行えるので、例えば視交又上核(SCN)の細胞を長期培養すれば、24時間を少し上回るサイクルで自発発火のレートが推移するのを10日以上にわたり観察でき、サーカディアンリズムの研究に最適です。
マルチ電極アレーシステムの利点を活かした実験手法の一つに「共培養」が挙げられます。2つの組織、および2種類の細胞を隣接させて培養し、機能的なコネクションや相互作用を電位伝播の記録により確認できます。
右の例は間葉系幹細胞とプライマリー心筋細胞を共培養し、活動電位の伝播を観察しています。
中央の間葉系幹細胞で両側の心筋細胞の橋渡しをするように培養しています。移植細胞の統合を観察するin vitroの理想的なモデルです。
右の写真は網膜をRhodamine Dextranで処理したもので、視神経から放射状に伸びている軸索とガングリオン細胞の細胞体を赤色に染色させた状態で、高解像度MEA上にマウントしています。
高解像度MEAはTiN電極の特性と高度な製造工程技術により初めて実現する世界最高密度のマルチ電極アレーです。1つの神経細胞の活動電位が複数の電極により記録され、その波形は神経細胞と電極の距離の違いにより少しづつ異なります。in vivoのテトロード電極による手法と同様に、これらのデータで神経細胞の同定と分類が可能となります。